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【Part1】再配達がもたらす環境負荷とは
私たちが当たり前のように利用している宅配サービス。その裏側で、物流現場を悩ませている課題のひとつが「再配達問題」です。
「不在だったので再度お届けします」――この一文の裏には、環境への大きな負担が隠れています。
国土交通省の調査によると、日本国内の宅配便の再配達率は約10%前後。つまり、10件に1件の荷物が一度で届けられず、再びトラックを走らせているという現実があります。
その結果、再配達に伴うCO₂排出量は年間約42万トンにものぼると推計されています。これは、一般家庭およそ15万世帯が1年間に排出する量とほぼ同等。数字にしてみると、その影響の大きさが見えてきます。
再配達は、単に物流業者の負担やコスト増にとどまらず、地球規模の環境問題でもあるのです。
1回の再配達で使用される燃料はわずかでも、全国で発生する膨大な件数を積み上げれば、結果的に多くのエネルギーが浪費されることになります。
さらに、渋滞の悪化や騒音問題、ドライバーの長時間労働など、社会的影響も無視できません。
こうした中で、再配達を減らすことは「物流の効率化」だけでなく、「環境負荷の軽減」につながる取り組みとして注目されています。
環境省は、再配達が全体のCO₂排出量の約2〜3%を占めていると指摘しており、もし全国で再配達を半減できれば、年間20万トン以上の排出削減が可能になる計算です。これは、自家用車数万台分の排出量に匹敵します。
再配達の背景には、私たち消費者のライフスタイルの変化もあります。
共働き世帯の増加により日中に在宅している人が少なくなり、配達の多くが不在票対応となっています。
また、「送料無料」「即日配送」などの利便性が一般化した結果、細かく分かれた小口配送が増え、ドライバー1人あたりの配達件数が急増しています。これが現場の効率低下を招き、再配達の温床になっているのです。

さらに、ECサイトの拡大によって配送の量自体が年々増加していることも無視できません。
2023年度の国内宅配便取扱個数は50億個を突破し、過去最高を更新。
そのうちわずか10%が再配達になるだけで、年間5億回近い再配達が行われている計算になります。
この回数を減らすことができれば、物流業界の環境負荷を大きく改善できる可能性があるのです。
最近では、企業や自治体もこの問題に本格的に取り組み始めています。
たとえば、受け取り場所を自由に選べる「置き配サービス」や「宅配ボックス」の設置促進、駅やコンビニでの「共同受け取り拠点」の整備など、再配達を減らすための新たな仕組みが広がりつつあります。
これらの取り組みは、単なる利便性の向上だけでなく、「配送の効率化=環境へのやさしさ」を両立する新しい発想といえます。
再配達をゼロにすることは簡単ではありません。
しかし、私たち一人ひとりが少しだけ意識を変えることで、その数を確実に減らすことはできます。
「不在になりそうな日は受け取り方法を変更する」「指定時間を活用する」――こうした小さな行動が、地球の未来を守る第一歩になるのです。
【Part2】“受け取りやすさ”をデザインする新しい仕組み
再配達問題を解決する鍵は、「どうすれば荷物を一度で届けられるか」という一点にあります。
そのために、宅配業界は今、“受け取りやすさ”そのものをデザインし直す段階に入っています。
テクノロジーの進化と生活スタイルの変化が交わる中、さまざまな新しい仕組みが生まれています。
まず注目されるのが「置き配」の普及です。
玄関先や宅配ボックスなど、あらかじめ指定した場所に荷物を置いてもらうサービスで、利用者の不在時でも受け取りが可能になります。
国土交通省の調査では、置き配を導入した地域では再配達率が半減した例も報告されています。
安全性を確保するため、配達完了時に写真を送る仕組みや、アプリで受け取り状況を確認できるシステムも整っており、利便性と安心感の両立が進んでいます。
また、マンションやオフィスビルでは**「宅配ボックス」**の設置が急増しています。
特に近年では、マンション建設時の標準設備として採用されるケースも多く、再配達削減に大きく貢献しています。
一方で、既存の住宅や戸建て向けにも後付けタイプのボックスが普及し、個人でも導入しやすくなっています。
こうした仕組みが広がることで、再配達率の低下だけでなく、配達員の業務負担の軽減にもつながっているのです。
さらに、物流業界全体が注目しているのが**「受け取り拠点の多様化」**です。
コンビニ受け取り、駅ナカロッカー、ドラッグストアやスーパー内の引き取りカウンターなど、生活動線上で荷物を受け取れる仕組みが整いつつあります。
これにより、「自宅で待つ必要がない」「通勤や買い物のついでに受け取れる」といった選択肢が生まれ、再配達の発生そのものを防ぐ効果が期待されています。
都市部ではすでに「PUDOステーション」や「Amazon Hub」などのロッカー型サービスが拡大しており、利用者数も年々増加しています。
こうした仕組みを支えているのがデジタル技術の活用です。
配達員と利用者をリアルタイムでつなぐアプリや、AIによる最適ルートの自動算出、データ連携による配送効率化など、テクノロジーが“受け取りやすさ”の基盤をつくっています。
特にスマートフォン通知による「事前連絡」や「時間帯変更」機能は、利用者にとっての自由度を高め、再配達の発生を大幅に抑制している要素のひとつです。

最近では、企業と自治体が協働して「地域全体での受け取りインフラ整備」を進める動きも見られます。
過疎地域では共同配送や移動販売車と連携し、地元スーパーや郵便局を受け取り拠点として活用する例もあります。
このような地域密着型の取り組みは、高齢化や人口減少といった社会課題の解決にもつながり、持続可能な配送モデルとして注目されています。
“受け取りやすさ”のデザインは、単なる利便性の追求ではありません。
それは、**「再配達を減らす=環境への配慮」**という新しい視点を社会全体で共有する試みでもあります。
私たち利用者も、受け取り方法の選択や通知設定の活用など、小さな行動でこの仕組みに参加できます。
再配達が減れば、CO₂排出が減り、道路混雑が緩和され、ドライバーの働き方も改善されます。
つまり、「受け取りやすさのデザイン」は、社会全体の“優しさ”を再設計することでもあるのです。
【Part3】共創でつくる“再配達ゼロ社会”への道
再配達を減らすための取り組みは、もはや一企業の努力だけでは解決できない段階に来ています。
都市構造、ライフスタイル、テクノロジー、そして地域社会――それぞれが関わり合う中で、「どうすれば一度で届けられる社会をつくれるのか」という課題が問われています。
いま、その答えを探る動きが“共創”のかたちで広がりつつあります。
まず、注目すべきは企業間の連携です。
宅配業者同士が一部エリアで配送網を共有し、効率化を図る実証実験が進んでいます。
例えば、ヤマト運輸と佐川急便が共同で「ラストワンマイル配送」を行う試みや、EC事業者と地場の配送業者が協働して配送データを共有するケースです。
こうした連携によってトラックの重複走行を減らし、結果としてCO₂排出量の削減にもつながります。
ライバル関係を越えた「協業型配送」は、今後のサステナブル物流の大きな柱となるでしょう。
次に重要なのが自治体と地域住民の協力体制です。
地方では、高齢者や共働き世帯の増加により、不在率が高くなる傾向があります。
そこで、地元商店や郵便局を荷物の一時預かり拠点として活用したり、地域ボランティアが高齢者宅への受け取り支援を行ったりといった「地域共助型配送」が広がっています。
特に、地方自治体が主導して「地域物流連携協議会」を設置し、地元企業・住民・配送事業者が課題を共有しながら解決策を模索するケースも増えています。
これは単なる再配達削減策にとどまらず地域の生活インフラを守る取り組みでもあります。
さらに、デジタル化とデータ共有も“再配達ゼロ社会”の実現に欠かせません。
AIを活用して受け取り時間を予測したり、スマートロッカーをネットワーク化してリアルタイムで空き状況を確認したりといったシステムが登場しています。
今後は、配送情報を消費者・配達員・施設がシームレスに共有できる「デジタル物流プラットフォーム」の構築が鍵を握ります。
これにより、配送効率の向上だけでなく、交通渋滞の緩和やドライバーの労働時間短縮といった副次的効果も期待できます。
しかし、技術だけでは限界があります。
最終的に再配達を減らすためには私たち利用者一人ひとりの意識改革が欠かせません。
例えば、「受け取りやすい時間帯を登録する」「配達予定の通知をチェックして不在を防ぐ」「再配達を依頼する前に置き配を検討する」――こうした小さな行動の積み重ねが、社会全体の効率化と環境負荷削減につながります。
「便利さ」と「責任ある選択」を両立させる意識が、これからの時代に求められているのです。
再配達問題の解決は、単なる物流課題ではありません。
それは環境問題・労働環境・地域共生という複数のテーマが交差する“社会的課題”です。
企業、行政、地域、そして消費者がそれぞれの立場から協力し合うことで、より持続可能な社会が実現します。
今、物流の現場では「再配達ゼロ」を掲げるプロジェクトが次々に立ち上がっています。
それは、配送を単なる“物を運ぶ作業”ではなく、“人と人、地域と地域をつなぐ社会的活動”へと進化させる動きでもあります。
その未来を支えるのは、最先端のテクノロジーだけではなく、私たち一人ひとりの小さな協力の積み重ねです。
“再配達ゼロ社会”の実現 ― それは、便利さとやさしさが共存する、新しい物流のかたちを描く挑戦なのです。
✅ 次回は『グリーン物流の挑戦ーCo₂削減と社会的責任』です。
