【第3回】ラストワンマイルを制する ― 都市型と地方型の配送戦略

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Part 1:物流の最前線 ― ラストワンマイルの重要性

「ラストワンマイル」という言葉は物流の最終工程、つまり“顧客の手元に荷物を届ける最後の区間”を指す。近年、このラストワンマイルが物流業界における最重要課題として注目を集めている。なぜなら、この最終区間こそが、顧客満足度を左右する決定的なポイントであり、同時に最もコストがかかる部分でもあるからだ。
現代の消費者は、ECサイトやアプリを通じていつでも簡単に商品を購入できる。だが、どれほど迅速に商品を出荷しても、最終的に顧客の手元に届くまでの“ラストの数キロ”がスムーズでなければ、満足度は大きく下がる。
たとえば「配送時間が合わない」「再配達が多い」「受け取り方法が限られる」といった問題は、企業のブランドイメージに直結する。

一方で、このラストワンマイルこそがコストの最も高い領域でもある。
物流全体のコスト構造を分析すると、実に約4割がラストワンマイルに集中していると言われている。人件費、車両維持費、燃料費、交通渋滞による時間ロス — これらが重なり、企業の収益を圧迫しているのだ。
そこで注目されているのが、AIやIoT技術を活用した効率化である。配送ルートをAIが自動で最適化し、混雑回避や走行距離短縮を実現する仕組みが広がっている。さらに、スマートロッカーや置き配、共同配送といった新しい仕組みも次々に登場し、都市型・地方型それぞれの環境に適した配送モデルが形成されつつある。
ラストワンマイルは、単なる「配送の最終工程」ではなく、企業と顧客をつなぐ最前線の接点である。この領域を制することが、物流業界全体の競争力を左右する時代に突入している。

Part 2:都市型配送モデル ― スピードと効率の両立を目指して

都市部における配送は人口密度が高く、交通量も多い。加えて、再配達の多発や駐車スペースの不足といった課題が山積している。その一方で、消費者は「当日配達」「時間指定」「夜間受け取り」など、多様なニーズを求める。こうした都市特有の条件下で、いかに効率的にラストワンマイルを実現するか、物流企業にとっての大きな挑戦である。
まず、都市型モデルの中心にあるのが**マイクロフルフィルメントセンター(MFC)**の活用だ。これは都市近郊に設けられる小規模な物流拠点で、AIによる在庫管理と自動仕分け機能を備えている。従来のように郊外の大型倉庫から配送するのではなく、顧客の近くに小さな拠点を設けることで、配送時間を短縮し、スピード配送を実現する。
また、都市部ではラストワンマイルの多様化が進んでいる。たとえば、自転車便や電動キックボードを使った「マイクロモビリティ配送」 駅構内や商業施設内に設置された「受け取りロッカー」 さらには「置き配」や「共同宅配ボックス」といった受け取り方法の選択肢が拡大している。こうした仕組みは、再配達の削減と人件費の抑制に大きく貢献している。
さらに、データドリブンなオペレーションも都市型モデルの鍵だ。AIが交通データや注文履歴を分析し、最適な配送時間帯や経路をリアルタイムで提示する。配送員はタブレットでルート情報を受け取り、効率よく複数の荷物を届ける。実際、AIによるルート最適化を導入した企業では、走行距離を平均15〜20%削減できたという報告もある。

近年では、環境対応型の都市物流も重視されている。EVトラックや自転車配送を導入することで、CO₂排出を削減し、持続可能な配送ネットワークを構築する企業が増えている。都市部では、効率化だけでなく、環境負荷の低減が企業価値を高める要素となっており「グリーン・ロジスティクス」の視点が不可欠になっている。
都市型のラストワンマイルは、スピードと効率、そして環境配慮の3つの要素をバランスよく融合させることが成功のカギといえる。

Part 3:地方型配送モデル ― 共助と連携が生む新しい物流網

一方、地方では都市部とは異なる課題が浮き彫りになっている。人口減少や高齢化により、配送需要が限られている地域では、採算性の確保が大きなテーマだ。道路網が発達していない山間部や離島などでは、配送コストが高く、1回の配達あたりの効率が著しく低下する。
こうした課題に対し、地方型モデルでは**「共助と連携」**を軸にした新たな取り組みが進んでいる。その代表例が「共同配送」だ。
複数の事業者が同じルートを共有し、同一エリアの荷物をまとめて配送することで、コスト削減と労働負担の軽減を同時に実現する。地方自治体が主導して地域配送ネットワークを形成するケースも増えており、官民連携が地方物流の要になりつつある。
また、地方型モデルではデジタル化による遠隔管理も重要なポイントだ。AIやIoTを活用し、配送車両の位置情報や温度管理をクラウドで一元化することで、少人数でも広範囲の運用を可能にする。ドローンや自動配送ロボットを組み合わせることで、山間部や過疎地域でのラストワンマイルを効率化する実証実験も進んでいる。

特に注目されているのが、**「地域密着型のスマート配送拠点」**の整備だ。地元スーパーや郵便局、コンビニなど既存のインフラを物流拠点として再活用することで、地域全体での持続的な配送体制を構築する。こうした動きは、単なる物流効率化にとどまらず、地域経済の活性化や雇用創出にもつながる。
さらに、地方ならではの特性を生かしたオンデマンド配送の導入も進んでいる。
スマートフォンアプリを通じて地域住民が配達を依頼し、地元の運転手や店舗が柔軟に対応する「地域シェア配送」だ。大手企業と地域事業者が連携することで、より細やかなサービス提供が可能になり、地方の“最後の一歩”を支える新たな仕組みが生まれつつある。

都市と地方ではそれぞれの条件に合わせたアプローチが求められている。
都市ではテクノロジーによる高速化と効率化、地方では共助と連携による持続可能な体制づくり。どちらも共通するのは、**「人を中心にした配送モデル」**への回帰である。
AIやロボティクスが進化しても、最終的に顧客との信頼関係を築くのは「人の関与」だという点は変わらない。
今後のラストワンマイル戦略は、テクノロジーと地域性、そして人の力を融合させた「ハイブリッド物流」へと進化していくだろう。これが、次世代の物流競争を制する鍵になる。

✅ 次回は『【第4回】物流DXとは何かー宅配業界のデジタル革命を読み取る』

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